下腿(すねの疲労骨折)
下腿疲労骨折は
発症する骨と発症するパターンに基づき、
大きく以下の4つに分類されます。
①脛骨疾走型
②脛骨跳躍型
➂腓骨疾走型
➃腓骨跳躍型
中でも②脛骨跳躍型は保存療法では非常に治りにくく、
手術をしても復帰まで約3か月かかるという非常に厄介なケガ。
今回は下腿疲労骨折の概要から発生メカニズム、
予防トレーニングの実際などをご紹介させていただきます。
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1.下腿疲労骨折とは
2.受傷原因
3.応急処置
4.手術方法
5.リハビリから復帰へ
6.予防トレーニングの紹介
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1.【下腿疲労骨折とは】
下腿の骨には
太く体重の直接かかる脛骨と、
細く脛骨と共に体重を支える腓骨があります。
これらの骨が
①運動により繰り返し外力が加わり
②疲労して骨強度が減少したところで
③正常な負荷内で骨折してしまったもの
が下腿疲労骨折です。
下記図のうち、
赤丸が疾走型の疲労骨折が発生しやすい場所
青丸が跳躍型の疲労骨折が発生しやすい場所
になります。
名前の通り、
疾走型の疲労骨折は陸上長距離種目に多く、
跳躍型の疲労骨折はクラシックバレエやバスケットボール
で好発しやすいです。
◆前回のブログ(下記URL)では、
足部の疲労骨折であるジョーンズ骨折についてお話しさせて頂きました。
こちらの疲労骨折はジョーンズ骨折とは異なり、脛に徐々に痛みが発生し、
痛みに耐えきれなくなって医療機関を受診すると
「疲労骨折」と診断されることが多いです。
2.【受傷原因】
発症数のピークが16歳、つまり高校1年生であるため、
急激な運動量の増加が原因と言われています。
ただ、女性のピークは男性に比べて1年ほど早いことから、
骨の成長そのものと関係があるのではという説もあります。
そして最初にお話しした厄介な脛骨跳躍型の疲労骨折は、
脛骨の中央前方に生じます。
この場所はスプリントやジャンプなどの蹴り出しや、
着地の時に強い湾曲負荷が加わりやすく、
骨を引き裂くような力がはたらくことになります(下記図)。
特にジャンプでは脛骨中央前方部にこの湾曲負荷が強く加わりますが、
動作中に以下のような状態になるとこの湾曲負荷をさらに助長させやすいです。
・骨盤の後傾位(腰が丸まっている状態)
・重心の後方移動
予防トレーニングやリハビリではこれらの機能の改善を図り、
受傷や再骨折の予防をすることが必須となります!
◆疲労骨折を生じる方は股関節や足関節の可動域が小さかったり、
着地の衝撃吸収が上手く行えない印象があります。
ランニングやジャンプにおいて、
脚を滑らかに曲げ、フワッと衝撃を吸収するような動作を獲得することは
本障害において非常に大切かと思います。
3.【応急処置】
慢性的な負荷により起こる『障害』に分類をれますが、
痛みが強い時は炎症を起こし、腫れたり熱を持っていることが多いです。
なので『外傷』の応急処置に準じて、まずはアイシングを行います!
しかし下記の理由から
圧迫は行わず、氷嚢をしっかり当てる程で十分かと思います。
・骨が表層にあるため氷を当てる面に凹凸が生じやすく、
圧迫を加えると局所的に過度な低温になりやすい
・浮腫が問題になることが少ない(言い換えると、圧迫をするメリットが少ない)
アイシングについての詳細な方法は、
下記Instagramの投稿をぜひ参考にして下さい!
痛みが強く歩行困難な時は、松葉杖等で免荷をして移動しましょう。
◆下腿の疲労骨折は数日で日常生活上の支障がなくなることが多いため、
痛みを抱えながらスポーツを継続することも多いです。
ただ脛骨跳躍型の場合、痛みが少なくても
完全骨折に至ってしまった例があるので、基本的に安静を選択する方が
良いのではと思います。
4.【手術方法】
脛骨跳躍型疲労骨折は、早期のスポーツ復帰を望む場合、
手術が第一選択となることが多いです。
ジョーンズ骨折の時と似ていますが、
①骨折部の血流が少ない
②骨折部を引き伸ばそうとする力が働きやすい
という特徴があるからです。
手術方法は主に髄内釘(部位を固定するために骨髄内に挿入する釘のこと)
による固定を行います。
この手術方法では膝蓋腱を縦に切り、脛骨に髄内釘を打ち込みます。
髄内釘により骨の強度が上がり、脛骨に加わる湾曲負荷も減少するので、
再発を防ぐこともできます!
◆ 数ヶ月の保存療法で骨癒合が確認できても、
復帰後すぐに疼痛が再発したり、軽い衝撃で完全骨折してしまった例も
確認されています。
なので脛骨跳躍型疲労骨折の場合、アスリートはやはり
手術をされることをお勧め致します。
5.【リハビリから復帰へ】
上述した髄内釘固定術を行った場合、
リハビリの段階や開始時期の目安は大まかに以下のようになります。
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・術後3日〜:歩行が可能になれば退院。リハビリではクォータースクワットを開始
・術後3週間:軽い負荷でのレッグエクステンションやハーフスクワットを開始
・術後6週間:ジョギング開始
・術後2ヶ月〜:ランニングから開始し、徐々にスプリントやステップ動作へ進む
・術後10週間〜:ノンコンタクトから部分合流し、徐々に完全合流
・術後3ヶ月〜:完全復帰(試合出場へ)
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骨癒合の状態や術部である膝蓋腱の痛み・炎症に合わせて
段階的に負荷を上げていきます。
◆過度な炎症により膝蓋腱の裏側にある膝蓋下脂肪体が肥厚してしまうと、
競技復帰後もこの部位の痛みが残りやすいです。
なのでアイシングや弾性包帯での圧迫、膝蓋骨のセルフモビライゼーション
(下図)を適宜行い、炎症や癒着をしっかり予防して下さい!
6.【脛骨跳躍型疲労骨折予防トレーニング】
脛骨跳躍型疲労骨折は保存療法では非常に治りにくい他、
手術をしても復帰まで3ヶ月を要する厄介なケガです。
やはり予防が重要なことは言うまでもありません。
以下に予防のためのトレーニングの一部をご紹介させて頂きます!
<1>足関節モビリティドリル
・片膝立ちの姿勢になります
・棒をつま先の真ん中に立てておき、膝を曲げながら棒の横を通過させて下さい
・踵が浮きそうになるギリギリのところまで、体重を前にかけていきましょう!
・10回を1〜2セット行います
★足首が硬いと重心が後方に移動しやすくなる他、ジャンプの着地などで衝撃吸収能力が低下しやすくなります。
<2>リバースランジ
・身体を直立させたまま、片脚を後ろに踏み出ししゃがみ、
元の姿勢に戻ります。
・踏み出す時や元の姿勢に戻る時は、主に踏み出さない側の脚で支えて行いましょう。
・できるだけブレないように頑張ってみて下さい。
・10回を3セットずつ実施しましょう!
<3>シザースジャンプ
・両脚でジャンプし、空中で脚を前後に入れ替えて着地します。
・着地はできるだけ柔らかく、極力音が立たないように行いましょう。
・また、着地時に衝撃に負けて背中が丸まらないように気をつけて下さい。
・5回3セットずつ行います
<4>スクワット
・踵を肩幅に開き、つま先を30°程外に向けます。
胸を張り、腰が丸まらないようにしましょう
・膝をつま先に向かって開きつつ、お尻を引いて下降します。
太ももが地面と平行以下になるまで頑張って下さい。
この時、膝がつま先よりも前に出ないように気をつけましょう
・10回を3セット実施します
★スクワットは脚のトレーニングだけでなく、
体幹部分ではアンチフレクション(背中が丸まらないように耐える)
のトレーニングとしても非常に有効です。
【ふじみ野駅 徒歩1分 ふじみ野ライフ接骨院 リハ&トレーニングセンター】
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