肩関節脱臼

肩関節は可動域が大きい分不安定で、

人体では最も脱臼しやすい関節です。

また、10代で肩関節脱臼を受傷した場合、

反復性脱臼に移行する確率は90%とも言われています。

反復性に至った場合、再脱臼を防ぐには

手術による関節の修復などが必要になります。

肩関節脱臼はコンタクトスポーツでよく発生し、

受傷には突発的な要因が大きいですが、

肩関節や肩甲骨のアライメント異常などの素因が影響することもあります。

今回は肩関節脱臼の概要から発症メカニズム、

予防トレーニングの実際などをご紹介させて頂きます!

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1.肩関節脱臼とは

2.受傷原因

3.応急処置

4.手術方法

5.リハビリから復帰へ

6.予防トレーニングのご紹介

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1.【肩関節脱臼とは】

肩関節は上腕骨骨頭(凸面)と肩甲骨関節窩(凹面)で

構成される関節です。

厳密には肩甲上腕関節と言います。

肩関節は以下の3つ要因により、人体では最も多く

外傷性脱臼(ケガよる脱臼)が発生しています。

①肩関節は球関節であるため

(動かせる範囲は広いですが、その分不安定です)

②関節の凸面である上腕骨骨頭に対し、凹面である

肩甲骨関節窩が非常に浅く(上腕骨骨頭の1/3ほどしかありません)、

骨で覆うことのできる面積が少ないため

(股関節も球関節ですが、こちらは凹面が深いので

 同じ球関節でも支持性が高くなっています)

③関節包や靱帯が他の関節に比べて弱いため

(股関節は関節包・靱帯が非常に強力になっているため、

 脱臼しにくいです)


また、肩関節脱臼のうち97〜98%は前方脱臼

(上腕骨頭が身体の腹側に飛び出してしまうもの)と言われています。

これは肩関節の前面の組織が、後方に比べて脆弱であるためです

(人間は手を使うため、前の方が動かしやすくできています)。

この外れやすい肩関節が、

以下のような状況で外力が加わり、骨頭が関節窩を前方に

乗り越えてしまい脱臼が生じます。

・地面に転倒し、肩を横から強打した時

・タックルなどで腕を後ろに持っていかれた時(肩関節伸展・外転・外旋の強制)


2.【受傷原因】

特にタックルなどで腕が後ろに持っていかれてしまうと、

肩にテコの力が加わり、後方と比較して脆い前方から外れやすくなっています。

事故的な要因が大きいですが、

・肩関節や肩甲骨にアライメント異常がある

・肩周囲組織の支持性が乏しい

・肩関節、肩甲骨が硬く多少の無理をきかせるキャパが少ない

といったことも脱臼の発生に影響してきます。

例えばアライメント異常に関してですが、

肩関節脱臼を受傷しやすい方に下図のような

アライメント異常がみられることが多いです。

右側は左側と比べて肩甲骨が前に傾き、外側にズレています。

また、上腕骨頭も少し前に飛び出しています。

このような状態で肩が後ろに持っていかれると、

反対側と比べてより前に外れやすくなってしまいます。

特にコンタクトスポーツをされている方は、

予防のためのトレーニングを行い少しでも

リスクを減らしておくことをおススメします!


3.【応急処置】

現場に整復できる方(医師か柔道整復師)がいて、

かつ整復可能な状況であれば整復をします。

そうでなければ救急車を呼び、なるべく早く医療機関へ搬送しましょう。

早急に医療機関へ搬送する理由としては、外れた上腕骨頭が

周囲の神経や血管を圧迫する可能性があるからです!

骨頭による圧迫がある場合、神経や血管の阻血が長時間になると

神経麻痺などの後遺症が出てしまうこともあります。

脱臼があり、整復ができない場合は迷わず救急車を呼んで下さい!

整復ができた場合でも、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

受診前はアイシングをして炎症の拡大を防止しつつ、

再脱臼を予防するために固定をします。

アイシングについての詳細な方法は、下記Instagramの投稿をぜひ参考にして下さい!

https://www.instagram.com/p/CykMshPvWvb/?igshid=MXFrZ2U3czVjOTF3OA==

固定は下図のような装具があればベストですが、なければ一般的な三角巾固定を行なって下さい。

(アルケア株式会社様 サイトより)

とにかく脱臼した腕がブラブラ動かないようにすることが大切です!


4.【手術方法】

反復性肩関節となり、日常生活やスポーツ活動に支障が

出てしまっている場合、手術の適応となります。

主な手術方法は以下のような物があります。

①鏡視下Bankart(バンカート)修復術

②Bristow(ブリストー)変法


①鏡視下Bankart(バンカート)修復術

こちらは脱臼に伴い肩前下方の組織が損傷して(バンカート損傷)、

上腕骨頭が前下方から支えられなくなっている状態で用います。

損傷した靭帯や関節の軟骨などをアンカーという

留め金のようなものを用いて修復し、

上腕骨頭を再び支えられるようにします。


②Bristow(ブリストー)変法

こちらは上腕骨頭の前下方への脱臼を防止するため、

筋肉(上腕二頭筋短頭と烏口腕筋)を骨ごと肩の前に移植して、

脱臼防止のブロックを作る方法です。

①鏡視下Bankart(バンカート)修復術とは異なり、

関節自体の修復は行いません。


5.【リハビリから復帰へ】

今回は上述した手術方法のうち、

①バンカート法について簡単に記載させて頂きます!

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・術後1日〜:肩関節の動きを伴わない筋力トレーニングを開始。

        固定は術後4〜5週間ほど継続する

・術後3週間〜:軽い負荷での肩インナーのトレーニングを開始。

                          可動域訓練は制限を設けて開始

・術後6週間〜:可動域訓練の範囲を拡大していく

・術後2ヶ月〜:ジョグ・ランニングを開始。可動域訓練は

                           更に範囲を拡大し、肩周囲の筋力訓練の負荷も上げていく

・術後3ヶ月〜:可動域訓練は全方向で許可。低負荷での

                          ウェイトトレーニングを開始。スプリントや

                          ステップ動作のトレーニングも開始。

・術後5ヶ月〜:制限なしてウェイトトレーニングを許可。

                          ノンコンタクト系競技は全ての練習参加を許可。

                          コンタクト系の運動は制限付きで練習復帰可。

・術後6ヶ月〜:コンタクト系の運動へも復帰可。

                          オーバーヘッドスポーツでは競技練習を開始。

                          完全復帰を目指していく。

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バンカート法では、修復した関節組織が剥がれてしまうような

ストレスを回避しながら、徐々に肩の機能を

改善していくことがポイントになります!


6.【肩関節脱臼予防トレーニング】

肩関節脱臼は一旦生じてしまうと若年者では反復性に移行しやすく、

その場合手術適応となることが多いです。

手術をすると復帰までは半年ほどかかることもあり、

他のケガ同様やはり予防が重要となります。

以下に予防のためのトレーニングを一部をご紹介させて頂きます!


1.フルカンエクササイズ

①軽めの重り(0.5〜2kgほど)を持ちます。

 手は身体の真横ではなく、気持ち斜め前に出しましょう。

②肩をすくめず、首に余計な力が入らないようにしながら、

 ダンベルをゆっくり挙げていきます。120°ほどまで挙げていきましょう。

③挙げる時と同じくらいのスピードでゆっくり降ろしていきます。

・10〜15回を2〜3セット行いましょう!


2.キャット&ドッグ

①四つ這いになり、手を肩の真下、膝を股関節の真下に着きます。

 肘はしっかり伸ばしておきましょう。

 動作中肩はすくめないように気をつけて下さい。

②手で地面を押しながら、目いっぱい背中を丸めます。

 背骨が滑らかなカーブを描くようにイメージしてみましょう!

③今度は背中を大きく反らしていきます。

 こちらも偏りなく、背骨全体をまんべんなく

 反らせる意識でやってみて下さい。

・10回を1〜2セットやってみましょう!


3.肩甲下筋エクササイズ

①片手にプレートを乗せ、背面に持っていきます。

 この時、プレートを持った手側の肩甲骨を

 グッと下げておきましょう。動作中腰は

 反らないように気をつけて下さい!

②プレートが落ちないように水平をキープしたまま、

 手を背中から着けて・離してを繰り返します。

・15回3セットずつ行いましょう!


4.ダンベルプレス

①ダンベルを真横ではなく、やや斜め前に持って構えます。

 脚は肩幅に開き、胸を張りましょう。

 腰は反りすぎないようにして下さい!

②ダンベルを真上に押し上げます。

 この時、肩をすくめきるところまでグッと上げましょう。

 こうすることで、肩甲骨で腕を支える台座が出来上がります!

③元の位置に戻し、繰り返しましょう。

・5回できる重さで3セット実施します。


【ふじみ野駅 徒歩1分 ふじみ野ライフ接骨院 リハ&トレーニングセンター】

ふじみ野ライフ リハ&トレーニングセンター

医学の資格を持ったスタッフがカラダを評価し、専門的な分析をもとにメニューを作成しケアを施します。 身体の問題を改善し、動けるカラダを育み、日常生活さらにはスポーツを楽しめるようになるまで トータルでサポートできるのもリハ&トレーニングセンターの強みです。

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